乙一「失はれる物語」
2005年12月10日私のサイトに遊びに来てくださる方から薦められてこの本を読んだ。乙一という人は特異な作家なのではないだろうか?彼の書く小説は、基本的にはファンタジーだろう。ミステリーというには伏線の張られ方などが稚拙だし、社会に投げかけるメッセージが存在しないからだ。それ以上に面白かったのは、乙一という作家と私の好みが真逆であるという点だ。例えば、私はこの掌編の中で「傷」が一番好きだった。他人が受けた傷を触れるだけで自分に移動させる不思議な能力を持った2人の少年と特殊学級という今までおおよそ表に出たことがない場所の話。特殊学級の扱われ方が少々ぎこちないが、そこにスポットを当てたことは画期的だと思う。しかし乙一はこの小説を恥ずかしくて読み返せないらしい。一番一般書に近い位置にあるのにもかかわらず、だ(だからこそ乙一は読み返せないのかもしれない)。
逆に私が嫌いなのは、書き下ろし「マリアの指」だ。とにかく後味が悪い。幼い頃に母に見捨てられた少年が再び母と暮らせるようになるまでに、なぜ姉と姉の友人が殺人事件に関わらなければならなかったのか。その必然性が見出せない。乙一にとって、「マリアの指」を書くという作業は楽しかったらしい。ヒロインの造形という意味において。
乙一は、ファンタジー作家としてはまあまあだが、ミステリー作家としてはもっと修練を積まねばならないだろう。もっとも彼がミステリー作家を目指しているのであれば、の話だが。
逆に私が嫌いなのは、書き下ろし「マリアの指」だ。とにかく後味が悪い。幼い頃に母に見捨てられた少年が再び母と暮らせるようになるまでに、なぜ姉と姉の友人が殺人事件に関わらなければならなかったのか。その必然性が見出せない。乙一にとって、「マリアの指」を書くという作業は楽しかったらしい。ヒロインの造形という意味において。
乙一は、ファンタジー作家としてはまあまあだが、ミステリー作家としてはもっと修練を積まねばならないだろう。もっとも彼がミステリー作家を目指しているのであれば、の話だが。
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